絵のない絵本

絵のない絵本

The biggest painting in the universe

この星が絵でうめつくされたら

 

稲吉紘実著

出版社 フレーベル館

 

 

コンセプト

 

絵のない絵本展覧会

 

稲吉紘実[Hiromi Inayoshi]プロフィール

 

 

 

絵のない絵本

 

あなたが描く、絵のない絵本。

「この本に、自由に感性のおもむくまま、ただ絵だけ描いてください。」

絵だけ描いているという伝説の星。

そして、絵を描くことで、核戦争で崩壊してしまった星を

ふたたび、美しい星によみがえらせるという。

ただ絵だけ描いてください。永遠に・・・・・・

 

 

 

この星が絵でうめつくされたら -

 

 

 

ただ絵だけ描いてください。

 

 

 

ある星がありました。

それは、伝説の惑星。

そこは、みんな絵だけ描いている世界。

そこに生きるものは、

生まれて、すぐに絵を描きはじめます。

 

 

成長したものも、絵を描いています。

絵だけ描いています。

絵だけ描いているので、争いはおきません。

みんな笑っています。

笑ってないものは何を描こうか考えています。

で、すぐ描きはじめます。

 

 

星の生きものすべてが描いているので、

星がだんだん絵でうまっていき、

まるで、みんな絵の中に

生きているようにも思えます。

 

 

生まれたものが絵を描きはじめたとき、

だれも絵の指導はしません。

こう描きなさい。ああ描きなさい。

それじゃダメとか、いっさいありません。

ただ自由に、インスピレーションの

おもむくまま描くだけです。

 

 

その星の法則は絵を描くこと。

そして、絵を描く布のようなものが

生きるものに与えられ、

みんなそれに描きます。それが描きおわると、

また、新しい布のようなものが、

星からもらえます。

 

 

描き終わった布のようなものは、

次々に縫い合わされていきます。

この星では絵を描かなくても、しかられません。

強制がないからです。

 

 

この星には、みんなが絵を描いているとき、

空中に浮いている天使のような生きものがいます。

そう、この生きものが、みんなの心に

インスピレーションを与えているのです。

それは、地球流にいうと、

優しさとか愛とか、平和とかの目には見えないけれど、

一番大切な感性のようなものです。

 

 

その生きものは、宇宙から見た地球のような

まんまるの体と、色をしていて、前に口のようなものがあって、

うしろがわに目がついているという不思議なものです。

そして、黄色にオレンジの水玉が入った

手のような羽根をもっています。そして、ほとんど

空中にいるので、足は退化して、赤い丸い、くつのようなものが、

体にちょこっとついています。

 

 

みんな絵を描いているだけなので、たまに

退屈になります。すると、その天使のような生きものは、

みんなの気持ちがすぐわかります。

なぜって、みんなと心でつながっているからです。

天使は、そこにいき、みんなが楽しくなるように、

色んなことをしてあげます。

 

 

そして、この宇宙の美しい世界だけを抽出し、

映像を自分の目から発射させ、空中に映し出したりして、

みんなを驚かせ、楽しませ、感心させます。

それは、みんなが見たことのない世界ですから、また、

みんなの心に新たなインスピレーションがわき、

描く絵が変わってきます。

 

 

でも、ちゃんと天使が映していいものと、

悪いものとを、区別しているので、問題がおこったり、

欲望のようなものがわくことはありません。

もちろん、その天使は地球のこともよく知っています。

天使ですから、なんでも見えてしまいます。

地球の自然の美しさは、宇宙の中でも、実は有名です。

ですから、天使は地球の美しい森やジャングル、

そして、美しい海をみんなに映像にして見せたりします。

 

 

みんなは、こんなきれいな緑、こんなきれいなブルーは

見たことありません。なぜって、

この絵だけ描いている星は、森や、海や、自然が

何もないからです。

ごつごつした岩と、茶色の土だけの世界です。

 

 

だから、みんな布に絵を描いて、ほんとはそれで、

この星全体を包帯で巻くように手当てをしているような、

そして、地球のようなきれいな自然はないけれど、

生きものの優しい心で、愛のようなもので、

この星をつつみ、地球のような美しい星にすることが、

ほんとうの目的だったのです。

 

 

だから、生きるものがみんな絵だけ描いているのです。

ですから、神様のような方が、天使のような生きものを

つかって、この星を再生しようとされたのです。

はるかむかしこの星は、宇宙で一番美しい星でした。

そう、まるで生まれたばかりの地球のような。

そこは楽園でした。

 

 

食べ物は、いたる所に実っていて、

美しい川のようなものもあり、生きるものは

幸せそのものでした。でも、

だんだんと今の地球のようになってしまいました。

そして、もっと悪いのは、争いごとがたえず、

ついに核戦争がおこり、

すべてが、なんにもなくなってしまったのです。

 

 

海のようなものさえ一瞬に

蒸発してしまいました。ですから、この星は、

地球のような自然がなくなり、

殺伐とした、岩と土だけの世界、星と

なってしまったのです。

 

 

そして、放射能がなくなるまで、

また、はるか長い年月がかかったのです。

しかし、宇宙、星というものは、

つねに進化しなくてはならないそうです。

 

 

でも、一度核戦争で崩壊してしまった星に、

再び地球のような自然を蘇らせるには、

その原因をつくった生きものに心を変えてもらい、

二度とそのようなことをくり返さないような心を

つくらない限り、再び、美しい自然を蘇らせることが

できないという、宇宙の法則があるそうです。

 

 

そして、神様のような方が考えたのが、

もう一度この星に過去の核戦争をおこしたものの魂を

もった生きものを蘇らせ、この星を手当てして、

そして、それが終わったのち、

美しい地球のような自然を蘇らせようという計画でした。

そして、その神様のような方は、

その星を手当てする包帯に、その星を再び蘇らせる

生きものに、絵を描かせることにしました。

 

 

ただ絵を描かせることにしました。

絵だけ描かせることにしました。

 

 

この星に再び生まれた生きもの達は、

過去のことは覚えていません。でも、ちょっとした拍子に、

過去の記憶が戻ることがあります。

もし、戻ったとき、それをきっかけに、再び過去の星が

辿った方向に進んでしまうかもしれません。

それは恐ろしいことです。

その為に神様のような方が創造した生きものが、

天使だったのです。

 

 

天使は、みんなの心が光りよりも早くわかりますから、

過去の記憶が蘇りそうだなと、思ったら、

すぐそこにいき、イメージを修正します。そして、

美しい世界を映像で見せたり、ときには、3Dにして、

そこにさまざまな物体を出現させたりします。

でもそれは、物質化されないので、

その生きものの心が変わると、すぐ消えてしまいます。

 

 

その星の生きものは、人間のように

子どもが生まれます。女と男というように

性別があるかはわかりません。

子どもがいっぱい生まれ、すぐ絵を描きはじめます。

生まれて、何も知らないのに、ちゃんと

何かカタチを描いています。

 

 

地球でいえば、

雪の結晶のようなものを描いたりします。

幾何学模様です。

 

 

そして、じきに天使が映像で色んなものをみせるので、

絵も少しずつかわっていきます。

でも、必ずシンボルのような、マークのような印を描きます。

まるで、遺伝子に組み込まれているかのように。

 

 

子ども達は成長していくのか、いかないのか、

わからない姿をしていて、子どものようにもなれるし、

大人のようにもなれる力をもっています。

ですから、色んな感性で絵を描いていきます。

 

そして、永遠に・・・・・永遠に描きつづけていくのです。